基礎知識

不動産取引価格情報とは|国が実際の売買価格を公開している仕組み

国土交通省は、実際に成立した不動産の取引価格を四半期ごとに公開しています。どうやって集められ、どこまで細かく、何が伏せられているのかを説明します。

公開 2026-08-26

不動産の売買価格は、当事者以外にはわからないのが普通です。株式のように取引所があるわけでもなく、成約価格が公開される仕組みもありません。

ところが日本には、国が実際の取引価格を集めて公開しているデータがあります。国土交通省の「不動産取引価格情報」です。無料で、誰でも見られます。

どうやって集めているのか

不動産を売買すると、所有権の移転登記が行われます。国土交通省はこの登記の情報をもとに、取引をした人にアンケートを送っています

回答は任意です。返ってきた回答のうち、内容が確認できたものが集計され、四半期ごとに公表されます。つまりこのデータは、全部の取引を網羅したものではなく、アンケートに答えてくれた取引の集まりです。

2021年からは、これに加えて宅地建物取引業者から報告される「成約価格情報」も公開されるようになりました。こちらは不動産会社が仲介した取引の成約価格です。

ただし当サイトでは、この成約価格情報は使っていません。2つの系統は㎡単価の水準が系統的に違い、混ぜると2021年に相場とは無関係な段差ができてしまうためです。理由と実際の数字はデータの出典と作成方法に書いています。

公表されている期間は、2005年第3四半期から現在まで。20年分が積み上がっています。

何がわかるか

1件の取引について、おおむね次の情報が公開されています。

項目内容
種類宅地(土地)/宅地(土地と建物)/中古マンション等/農地/林地
所在地都道府県・市区町村・町丁目まで
取引価格総額
単価㎡単価・坪単価
面積土地面積または専有面積
建物建築年、構造、間取り、延床面積
改装改装済みか未改装か
前面道路方位、種類、幅員
都市計画用途地域、建ぺい率、容積率
時期取引が行われた四半期
取引の事情調停・競売など特殊な事情があればその旨

かなり細かいところまで公開されています。

一方で、最寄駅と駅からの徒歩分数は含まれていません。 価格に大きく効く条件なので意外に思われますが、2005年から現在までのどの期間のデータにも入っていません。

何が伏せられているか

一方、個人が特定されないように、次の加工がかかっています。

  • 番地は公開されない。 「〇〇町三丁目」までで止まります。どの物件かは特定できません。
  • 面積は丸められる。 数値がきりのよい単位に寄せられ、2,000㎡を超えるものはすべて「2,000㎡以上」とまとめられます。
  • 価格も丸められる。 有効数字が落とされているため、1円単位の正確な金額ではありません。
  • 建築年は年単位。 月までは出ません。

このため、「隣の家がいくらで売れたか」を調べる用途には使えません。地域の水準を知るためのデータだと考えてください。

どこで見られるか

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、地図や検索から1件ずつ見られます。2024年4月に、それまでの「土地総合情報システム」を引き継いで公開されたサイトです。

APIも公開されていて、申請すれば誰でもデータを機械的に取得できます。当サイトもこのAPIを使っています。

生のデータは1件ずつのレコードなので、そのままでは「この地域の相場はいくらか」がわかりません。当サイトは、これを市区町村・物件種別ごとに集計して、中央値と推移で見られるようにしています。

このデータの弱点

万能ではありません。使う前に知っておいたほうがいいことが3つあります。

1. 取引が少ない地域では当てにならない。 アンケートに答えた取引だけが載るので、もともと取引の少ない地域では数件しか出てきません。数件の中央値は、たまたま高い(安い)取引が1件あるだけで大きく動きます。当サイトが取引件数を必ず表示し、件数の少ない地域のページを作っていないのはこのためです。

2. 公表が遅れる。 取引 → 登記 → アンケート → 集計 → 公表、と段階を踏むため、数か月のタイムラグがあります。相場が急に動いている時期には、データは実態より遅れて見えます。

3. 物件の状態は反映されない。 リフォーム済みかどうか、管理状態が良いか、眺望はどうか。価格を大きく左右するこうした要素は、データには入っていません。同じ「築25年・70㎡」でも、実際の物件同士では相当な差があります。

それでも見る価値がある理由

これらの弱点を踏まえてもなお、実際の成約価格が20年分わかるデータは他にありません。

不動産ポータルに載っているのは売り出し価格、つまり売主の希望額です。査定額は不動産会社の見立てです。実際に払われた金額を示すデータは、公的にはこれしかありません。

相場を調べるときは、まずこのデータで水準を掴んでから、個別の条件を当てはめていくのが確実です。

当サイトでの集計方法はデータの出典と作成方法に、売り出し価格との違いは売り出し価格と成約価格は違うに書いています。